心地よい庭とくらす ㉔改造
<大石寝かせ据え直す>
今回は、庭作りの思い出を少しだけ。
初めて「雑木の庭」作りから数年後、久しぶりに本格的な「雑木の庭」の打ち合わせをしていた時に「庭でリスを飼えないだろうか」という話が出てきました。限られた敷地の中で、森に棲(す)むリスを飼うのは難しいのではと、具体的にはなりませんでしたが、とてもうれしい提案で「この庭にはリスがいるんですよ」と話されても、まんざらウソでもないような、そんな雰囲気の庭が作りたいと思いました。
出来上がりも気にっていただき、30年近くたった今もコナラの木立は健在で、庭に入れば街中でひとつ別世界を作っています。思い返すとこの庭を作れたことで、私の庭作りの方向性が見えてきたような気がします。
数年前、お父さまが作られた庭を改造させていただくことになったお宅では、松の木と、思い入れのある4㌧弱の大石を残して工事することになりました。仕立物の木と庭石がたくさんだった庭を、自然な雰囲気に作り変える中で「おじいちゃんの背中に似ているね」と子供さんに話されていた大きな立て石は、新しい庭に合うように、横向きに寝かせて据え直しました。長年立ち続けていたおじいちゃんの石ですが、ゴロンと横になった姿は安定感が増して、今見ても石本来のあり方に近づいた感じがします。
落葉樹がいっぱいの新しい庭を、おじいちゃんはどう思っているか気になるところですが、これからも庭の中から、ご家族を見守っていただけたらと思っています。
久富作庭事務所 久富正哉 (宮崎県)
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