心地よい庭とくらす ㉖緑の力
<緊張ほぐし心安らぐ>
住まいの庭を考える時、専門誌の編集者が言った「庭は非武装地帯」という言葉を思い出します。
大人も子供も、家を出たら何らかの緊張を強いられ、さまざまなストレスと戦いながら生きています。そんな私達が一番ホットできるのが、家に帰ってきた時。木々の緑や季節の花々が「さあ、ここで休戦。お疲れさま」と優しく迎えてくれると、緊張がほぐれるのもちょっと早くなるような気がします。社会の荒波から一時避難するわが家を、やすらぎの空間にしてくれるのが緑の防波堤、非武装地帯です。部屋から眺める景色が木立の中にいるような雰囲気だと、木々に抱かれているような安心感も生まれます。小さいかもしれませんが、私は「緑の力」を信じたいと思っています。
もう一つ、いつも庭を作りながら考えていることがあります。昔は見向きもされなかった、幹が曲がった木、下枝がない木、片側だけに枝がある木でも、庭の中でそれぞれが物語を紡げるように植えれば、どんな木にも生きる場所がちゃんとある。個性を持った木々が、美しく整った木には出せない存在感で、お互いを生かしながら面白い空間を作り出す、それが「雑木の庭」の大きな魅力なのではないかと。
剪定(せんてい)、水やり、害虫対策など、庭の管理は確かに手がかかりますが、その何倍もの喜びを返してくれます。豊かな緑に心安らぐ庭。そんな庭のある暮らしを楽しんでくださる方が、少しでも増えたらと願っています。
久富作庭事務所 久富正哉 (宮崎県)
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