2014/06/02薩摩伝統工芸士
先日、指宿で、とあるイベントに参加した御縁で、薩摩伝統工芸士の工房を訪ねる機会に恵まれた。
薩摩焼? すかし彫? 伝統工芸? もしかして・・?? と記憶をめぐらせながらたどり着いた場所は、
洒落た木造の館に緑の木々の中に色鮮やかに咲き誇ったつつじの花と
温泉噴水を擁した庭園のあるギャラリー兼ご自宅だ。
『薩摩彫刻陶芸窯元 南楓山』
中に入るとやはり・・
数年前の薩摩焼フェスタに行ったとき、薩摩焼のすかし彫を実演されていたの陶工さんの工房だった。
白薩摩焼に施された籠目の透彫。
フリーハンドで印をつけて黙々と彫進める作業に見入ってしまったのを思い出した。
この技術をもつ陶工、薩摩伝統工芸士さんはここのご当主ただ一人とのこと。
緻密な作業を繰り返し作られる作品にはただただ感動。
どんなものかというと
薩摩焼の籠目透かし彫りは全国の陶磁器に類を見ない精巧な技術で、
主に香炉に施されております。
籠目透かし彫りとは竹で編んだカゴ等の様な紋様を、剣先などの道具を使い表面を刳り貫いて
模様を施す彫刻技法の呼び名です。
現在では、この技術を持ち合わせた陶工は数名と激減して、いずれ絶えるのでは無いかと
危惧されており、非常に稀少な技のひとつです。
一般的には彫りを施す陶工を「彫り師」と呼び、彫りの作業だけを専門に制作しておりますが、
私はろくろ成形をはじめ、鋳込み、型作り、焼成まで制作の全行程を一人で行っております。
彫りの作業は収縮率を考慮し、粘土が乾かないうちにスピーディ、かつ慎重に進め、作品にも
よりますが、いったん彫りはじめると、一日、二日は眠らずに作業を続けることもあります。
--南楓山HPより--
ということなのだが、もうこれは、見ていただくしかない。
この工程を想像するだけでも、私のようながさつなものにとっては気の遠くなるようなことだが、
もっとすごいことに香炉のふたや本体が二重三重の構造になっていて、
上からみると透かし彫りの模様がピタッと一致しているのだ。
白一色と籠目の透かしが美しく気品に満ちている。
香炉や茶道具、ランプシェード、帯留めなど透かし彫りを生かした作品が並ぶ。
残念なことに、後継者がいないとのことだった。
技術を伝える物理的なむずかしさ、技術を受ける人材の不足、伝統工芸を継承していくための環境(公的環境)など、いろんなことがあるようだ。
昔は『薩摩(焼)』という言葉が日本を表していたのだか、今は『有田(焼)』なのだそうだ。
ここ、鹿児島にすばらしい伝統工芸がある。
鹿児島に限らず、伝統工芸は継承者が激減し、一般の需要が減り、高価なものになっている。
すたれていくのはとてももったいなく、悲しいことだ。
伝統工芸をもっと元気にできないものかなと思うことだった。
純朴なご当主、雅楓さんと、気さくな奥様ひろみさんに、美味しいコーヒーを淹れて頂き
白薩摩に囲まれた素敵な空間で楽しいひと時を過ごすと外は薄暗くなっていた。
やわらかな光に包まれたギャラリーと庭の緑と花々、
噴水から流れ出す水音が心地いい。
なんだか心が浄化されたような気分で家路についた。いい一日だった。
そうそう、ご当主の雅号の雅楓、お父様の春楓、窯元南楓山というお名前の『楓』は
お父様の叔父様が弓をひかれていた方で『楓会』という会を主宰して修練されていた、
その姿や人と成りに憧れて『楓』の文字を頂戴したとか。
この話、弓道人としての私にはうれしい話。
日本の伝統武道は伝統工芸にも通ずるものがあるのだ(*^。^*)
鹿児島営業所 鹿児島園材 田中